トランプ関税の衝撃と、個人投資家が「決してやってはいけないこと」

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2025年4月2日、アメリカのドナルド・トランプ大統領が「相互関税」と称して、日本からの輸入品すべてに24%の関税を課すと発表した。背景には、米中貿易戦争の再燃と、トランプ政権による保護主義的な国内回帰路線があると見られている。

この決定は、日本経済、とくに輸出産業に対して極めて大きな打撃となる。2024年の日本の対米輸出額は約21.3兆円。そのうち、7.2兆円を占める自動車および自動車部品が今回の関税の主な標的となった。ダイワ総研の試算によれば、この関税により日本の実質GDPは0.6%押し下げられる可能性があるという。

さらに悪いことに、トランプ大統領は関税の一時停止措置を一部の国にのみ適用したが、日本はその対象外とされた。日本企業にとってはまさに踏んだり蹴ったりの状況だ。

「ニュースに反応して動く」は投資において最悪の習性

こうした大きな経済ニュースが出ると、金融メディアは連日「影響」「今後の予測」「おすすめ銘柄」などといった情報を量産する。そして証券会社の営業は、今が「売りどき」だとか「乗り換えのチャンス」だと顧客を煽る。

だが、ここで強調しておきたいのは――その手の短期的反応は、合理的な投資判断とはまったく無縁だということだ。

投資の原理原則はシンプルで、以下のように要約できる。

  1. 将来のことは誰にもわからない(トランプがどう動くかなど予測不能)
  2. 個別企業や国に依存する投資は、常に集中リスクを伴う
  3. だからこそ、世界中に広く分散されたインデックスファンドを持つのが合理的

この原則から外れた行動――例えば、「日本株が危ないから全部売って米国株に乗り換える」などというのは、完全に間違った対応だ。なぜなら、今度は米国が関税を受ける側になるリスクを無視することになるからだ。

政治リスクを避けるには「全世界インデックス」に乗るのが最適

今回のような政治的リスクに対する最良の対応策は、地政学リスクや政策変更を前提にした「予測型の対応」ではない。そうではなく、そもそもどの国で何が起きても耐えられる構造にしておくことだ。

具体的には、以下のような戦略が必要になる:

  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のような、全世界に分散された低コストインデックスファンドを中核に据える
  • 日本株、米国株、新興国株などに自分で配分せず、「全部込み」にしておく
  • 毎月自動で積み立てる。NISAやiDeCoといった税制優遇制度を使えばなお良い
  • 一時的な株価下落に動揺せず、継続する

これだけだ。シンプルだが、極めて強い。なぜなら、合理性の上に立っており、行動に一貫性があるからだ。

「売る理由」はない。「積み立てを止める理由」もない

株式市場は、今回の関税措置を受けて一時的に動揺した。しかし、これに対して個人投資家が「売るべきだ」と判断する理由は、どこにもない。むしろ逆だ。

株価が下がったということは、同じ金額でより多くの口数を買えるということ。積立投資においては、下落局面こそがリターンを押し上げる機会である。市場が不安定になるたびに積立を止めていては、何のための長期投資か分からない。

短期的な不安に反応するのではなく、長期的な合理性に沿って、「何もしない」という最強の戦略を貫くべきだ。

まとめ:今すぐやるべきこと、そして絶対にやってはいけないこと

トランプ関税のような出来事は、投資における「心の試練」だ。ここで変に動いてしまうか、合理的な態度を維持できるかが分かれ道になる。

最後に、今回の件を踏まえた「行動指針」を整理しておこう。

やるべきこと

  • NISAやiDeCoをフル活用する
  • eMAXIS Slim全世界株式などの低コストインデックスファンドを積み立てる
  • ニュースを見ても投資方針は変えない
  • 急落時も粛々と積立を継続する

やってはいけないこと

  • 関税ニュースに動揺して売却する
  • 自国株を全部手放して別の国に集中する
  • 経済評論家やYouTuberの「今が買い(売り)時」に飛びつく
  • 短期の値動きで投資戦略をいじる

投資とは、世の中の騒がしさを横目に、合理的なルールに従い続ける行為だ。そしてそれは、金融業界の煽りにも、政治家の暴走にも、いちいち反応しない人間だけがたどり着ける道でもある。

焦らず、惑わされず、ほったらかそう。

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