合成着色料は「悪」なのか?科学が語る健康リスクと未来の食品政策

調べもの

コンビニのお菓子やジュースを手に取ると、ほぼ例外なく見かける「赤色40号」「黄色5号」などの表示。これらはすべて、石油由来の合成着色料――いわゆるタール色素です。

鮮やかな色で見た目をよくするこの仕組み、私たちは何気なく受け入れていますが、ここに「健康に悪影響があるのでは?」という疑念が長年くすぶってきました。

そして今、米国ではトランプ政権がこれらの合成着色料を段階的に禁止する方針を発表し、大きな波紋を呼んでいます。一体何が起きているのか? そして、それは私たちの健康と生活にとって本当に良いことなのか?

エビデンスと政策の両面から、徹底的に考察してみましょう。

合成着色料の正体と使われる理由

合成着色料とは、石油を原料に化学合成された色素で、19世紀から食品に使われてきました。主な特徴は以下のとおり。

  • 発色が鮮やかで、色ムラが出にくい
  • 熱・光・酸に強く、製品の品質を安定させる
  • 天然色素よりもコストが低く、使い勝手が良い

しかし、これらは「見た目」をよくするためだけのもの。栄養価はゼロであり、その安全性は常に科学的な監視のもとに置かれてきました。

健康影響:最も注目すべきは神経行動学的リスク

合成着色料に関する最も説得力あるリスクは、子どもの神経行動に与える影響です。2007年の「サウサンプトン研究」は、特定の合成着色料の混合物が多動性の増加と関連する可能性を指摘し、欧州では警告表示の導入に繋がりました。

さらに、カリフォルニア州の環境保護局(OEHHA)は2021年に「ADHDの診断があるなしにかかわらず、子どもの注意・行動に悪影響がある」とする包括的なレビューを発表。これを受けて、米FDAは長年の慎重姿勢を転換し、段階的な禁止方針を打ち出したのです。

アレルギー・発がん性・腸内環境への影響も

  • アレルギー:黄色4号(タートラジン)などは、アスピリン過敏症の人に発疹や喘息を引き起こす可能性があるとされています。
  • 発がん性:赤色3号は、ラットで甲状腺腫瘍が確認され、米国では食品用途での段階的禁止が決定。汚染物質としてのベンジジンの混入も議論されています。
  • 腸内環境:赤色40号がマウスの腸内細菌叢と炎症反応に影響を与えるという実験も出始めており、慢性的な炎症との関連が懸念されています。

天然着色料は安全なのか?

ここで「じゃあ天然なら安心」と思うかもしれませんが、残念ながらそれも一面的です。

たとえば、赤色の天然色素「カルミン」は昆虫由来であり、感作された人にはアナフィラキシーを引き起こす可能性があります。実際、カルミン入りの食品による重篤な症例が複数報告されています。

同様に、藍藻スピルリナもフェニルケトン尿症の方にとっては避けるべき成分であり、過剰摂取による肝障害やアレルギーのリスクも指摘されています。

天然色素の安定性の低さ、価格の高さ、供給の不安定性も、代替を進めるうえでの壁となっています。

比較表:天然 vs 合成

項目天然着色料合成着色料
色調自然・やや控えめ鮮やか・均一
安定性低(光・熱に弱い)
コスト高い低い
栄養価一部に抗酸化性ありなし
アレルギーリスク昆虫・藍藻由来の反応過敏症、発がん性不純物の混入リスク
使用目的自然志向、ブランド戦略低コスト・長期保存
表示義務多くが名称表示物質名または番号表示

トランプ政権の「禁止政策」は英断か暴挙か?

2025年4月、米国のトランプ政権は、主要な合成着色料を2026年末までに食品から段階的に撤廃すると発表しました。

この決定の根拠は、「小さいが無視できない影響を無視するな」という予防原則に基づくもの。短期的には科学的確実性に欠ける部分もありますが、長期的には以下のような恩恵が想定されます。

  • 子どもの行動異常リスクの低減(特にADHD)
  • 不必要な添加物の排除による製品改革
  • 天然着色料の市場拡大と技術革新の促進

ただし、産業界へのコスト負担、天然色素のリスク、代替品の安定供給といった課題も同時に発生します。規制を単なる政治ショーで終わらせないためには、科学的透明性と社会コストの最小化を追求する現実的設計が不可欠でしょう。

私の見解としては、「科学的不確実性があっても、必要性のないリスクは減らすべき」という立場です。合成着色料は、栄養を運ぶものではなく、ただの“飾り”。それが子どもの脳や行動に影響を与える可能性があるなら、残す意味は限りなく薄いでしょう。

まとめ:私たちはどう向き合うべきか?

  • 合成着色料の摂取を減らすことは、長期的にはリスク回避につながる
  • 天然着色料にもアレルギーなどの注意点があるので、ラベルをよく確認
  • 「見た目」より「中身」に目を向ける買い物習慣を意識する
  • 子どもや感受性の高い人がいる家庭では、特に注意が必要

個人的には、合成着色料に限らず加工食品の摂取は少ない方がいいと思いますが、気にしすぎて拒食症のようになってしまう人が増えてしまわないか心配です。

合成着色料のように“なくても困らない添加物”を減らすのは賛同しますが、完璧主義ではなく柔軟な最適化を心がける――これがエビデンスに忠実な、そして心も体も守る態度かなーと思います。どうぞよしなに。

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