「オステオパシーって本当に効くの?」──最新エビデンスで見る手技療法の真価

調べもの

最近、整体やカイロプラクティックに加えて、「オステオパシー」という言葉を耳にすることが増えてきました。なんでも、アメリカでは正式な医学教育を受けた「DO(Doctor of Osteopathy)」がOMT(Osteopathic Manipulative Treatment)という手技を駆使して、痛みや機能障害にアプローチしているとのこと。

「ポキッ」という音とともに背骨を鳴らされた経験のある方なら、あの一瞬の快感を覚えている人も多いはず。でも、それって本当に効いてるの? というわけで、今回はOMTに関するエビデンスの網羅的レビューをもとに、どの手技がどの症状に効くのかを本気で調べてみました。

「全人的アプローチ」は科学にどう向き合うのか?

OMTの根底には「構造と機能は不可分」「身体には自己治癒力がある」といった、いわばホリスティック医療的な哲学が流れています。これは「体・心・魂の統合性を大事にする」という思想で、個人的にはとても共感できる考え方です。

がしかし、問題はそこではなく、「それ、エビデンスあるの?」という点です。特に現代の医療では、ランダム化比較試験(RCT)が治療効果のゴールドスタンダード。全人的で個別化されたアプローチは、どうしてもこの枠組みに収まりきらない。結果として、「OMTはよくわからない」「エビデンスが限定的」と言われてしまうのです。

とはいえ、それでも研究は進んでいます。以下では、主要なOMT手技の効果とエビデンスレベルを症状別に整理してみましょう。

SMT/HVLA(スラスト手技)

いわゆる「ポキッ」と鳴るアレ。関節の終末域に高速・低振幅の力を加えることで、可動域改善や痛み軽減を目指します。

MFR(筋膜リリース)

こちらは「ふわっ」と優しく筋膜を伸ばすアプローチ。

MET(マッスルエナジーテクニック)

患者の自力筋収縮を利用して関節可動域を広げる手技。PNFに似ていますが、よりマイルド。

臨床での使い勝手もよく、比較的安全性が高いのもポイントです。ちなみに僕も、ストレッチの補助としてMETっぽい手技を取り入れることがあります。

CST(頭蓋仙骨療法)

一方で、最もエビデンスに乏しいとされているのがCST。

それでも広く使われ続けているのは、「触れてもらう安心感」「施術者との関係性」といった非特異的効果が大きいためでしょう。科学的には疑問ですが、プラセボを超える何かがあるのかもしれません(未検証ですが)。

研究デザインが追いつかないという問題

ここで強調しておきたいのが、OMTの効果が低いのではなく、研究デザインが難しいという点。

  • 個別化が前提のOMTに、標準化プロトコルを求めるRCTは相性が悪い。
  • 手技療法では、プラセボ対照群の設定が困難(「偽の手技」でも効果が出てしまう)。
  • 「ポキッとすれば痛みが和らぐ」という効果の多くは、実は非特異的要因(注意、触れられる、共感など)によってもたらされている可能性。

このあたりは、科学と実践のギャップをどう埋めるかという、医療全体の課題でもあります。

結論:OMTは「効く」が、「いつ、何に、どのくらい」は慎重に見るべし

現時点での結論はこうです:

  • 慢性腰痛に対しては、HVLA、MFR、METはいずれも「選択肢としてアリ」。ただし「劇的に効く」とは限らない。
  • 頚部痛はMETが最有望。HVLAやMFRは併用で効果が出るかも。
  • CSTやVM、リンパポンプなどは、今のところ「様子見」が妥当。信じるかどうかはあなた次第。

科学的な裏付けがすべてではありませんが、少なくとも「効くかどうかを知りたい」なら、やはりエビデンスが語ることに耳を傾けるべきです。

「エビデンスがすべてではないが、無視もできない」ーーこのスタンスが、科学と実践のちょうどいい接点なのかもしれません。OMTに限らず、あらゆる治療法を評価するときに、僕たちが忘れてはならない視点です。

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