マッケンジー法ってよくわからんなーと思っていたので、今回はマッケンジー法について述べた論文(R)を紹介します。この内容は、岩貞吉寛さん(国際マッケンジー協会日本支部所属)が2021年に『徒手理学療法』誌(第21巻第2号)に掲載した論文「マッケンジー法概要」をベースにまとめています。
マッケンジー法(正式名称はMcKenzie Method® of Mechanical Diagnosis and Therapy®, 略称MDT)は、ニュージーランドの理学療法士ロビン・A・マッケンジーさんが自身の臨床経験をベースに開発した治療法。姿勢や運動など「メカニカルな負荷」に対する患者さんの反応をもとに症状を分類し、それぞれに適した治療を進める方法です。
MDTの本質と目的
マッケンジー法の本質は、腰痛や頸痛、四肢の痛みといった問題を抱える人が「主体的に健康を取り戻して、その状態をキープできるようになること」です。つまり、単に痛みを取るだけじゃなく、「痛みに邪魔されない生活」を本人が主体的に維持できるようサポートすることが目的なんですね。
症状の解消はゴールじゃなくて、あくまでも健康を取り戻すための手段の一つとして考えられてます。
MDTの4つの分類をざっくり解説
マッケンジー法は、患者さんの症状や動きに対する反応を以下の4つに分類します。
- Derangement Syndrome(ディレンジメント症候群)
- 短期間で症状改善が期待できる特定の動き(Directional Preference, DP)がある。
- 見つかったDPを使って症状を整復し、その状態を維持し、再発を防ぐ。
- Dysfunction Syndrome(機能障害症候群)
- 動きを限界まで行ったときだけ症状が出る。
- 症状が誘発される動きを規則的に繰り返し行い、数ヶ月かけて徐々に改善を図る。
- Postural Syndrome(姿勢症候群)
- 一定の姿勢を続けた時だけ症状が出る。
- 症状が出にくい姿勢や環境調整を指導する。
- OTHER(その他)
- 上記のいずれにも当てはまらず、病理的所見や心理社会的要因も考慮し個別対応。
各分類の割合
脊椎関連の症状の場合、MDTの各分類の割合は以下の通りです。
分類 | 腰椎 | 頸椎 | 胸椎 |
---|---|---|---|
Derangement | 73% | 82% | 74% |
Dysfunction | 1.8% | 1% | 2% |
Postural | 0.2% | 0% | 0% |
OTHER | 25% | 17% | 24% |
このデータからも、Derangementに分類される割合が圧倒的に高く、短期間で改善可能なケースが非常に多いことが分かります。
MDTの分類体系の臨床的な意義
マッケンジー法の分類は、医師の診断名に頼らず、実際の「メカニカルな負荷への反応」を基準とします。そのため、腰痛や首痛、四肢の痛みなど、多様な症状に対してより的確な治療計画を立てることができます。
まとめ(結論)
- マッケンジー法(MDT)はメカニカルな負荷による症状の変化で分類し、それに応じた治療を行う。
- 症状の改善だけでなく、患者さんが主体的に健康を取り戻し維持することを目的としている。
- 特にDP(症状が改善する特定方向)が検出されるDerangement分類は治療効果が高い。
ちなみにこの論文だけではどのように治療するのか分かりにくいですが、マッケンジー法では、痛みが楽になる方向の反復運動や姿勢(Directional Preference; 方向性選好)を見つけ出し、その方向への運動を徐々に強度・頻度を高めながら治療を進めていくことが多いそうです。
具体的にはまず患者さんに、屈曲・伸展・側屈などの腰椎反復運動を痛みの様子を確認しながら行ってもらい、症状が「中央化(遠いところの痛みが背骨側に集まり軽くなる)」、「軽減」または「悪化」するかを評価します。
例えば、腰椎を後ろに反らすと痛みが軽くなったり中央化する場合は伸展方向がDPとして選ばれ、その動きを段階的に強めます。
一方で、高齢者の脊柱管狭窄症のように前かがみ(屈曲方向)で症状が軽減するケースもあり、その場合は屈曲方向へのエクササイズを行います。
このように患者ごとに楽になる方向へ段階的に負荷をかけることがマッケンジー法の中核であり、これによって痛みの軽減や可動域の改善を図ることが可能です。
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