人工膝関節置換術後に「小さな椅子」が効く?

論文

「人工膝関節の術後リハは病院必須なのか?」って疑問に答えてくれる研究(R)が出てまして、なかなか面白かったので内容をチェックしておくと役に立ちそうであります。

これは中国・上海で行われたランダム化比較試験で、人工膝関節置換術(TKA)を受けた患者さんを「自宅リハ組」と「病院リハ組」に分けて比較したもの。ざっくりデザインを見てみると、

  • 対象:TKAを受けた患者119人(平均年齢66〜67歳)
  • 内容
     ・病院リハ組 → 週2〜3回通院し、理学療法士の指導のもとで10か月以上の標準リハを実施
     ・自宅リハ組 → 低い椅子(高さ30〜40cm)に座って膝を深く曲げる動作を中心に、毎日20分程度のプログラムを実践
  • 評価指標:関節可動域(ROM)、痛み(VAS)、膝機能(Knee Society Score)、生活の質(WOMAC)、合併症の有無

で、結果を見てみましょう。

  • 1か月後の膝の曲がり(ROM):自宅リハ組の方が優れていた(約99度 vs 94度、P<0.01)
  • 1年後の成績:両群に差なし(非劣性が確認された)
  • 痛みや機能スコア(VAS、KSS、WOMAC):両群とも改善、差はほぼなし
  • 合併症:両群に大きな差なし
  • コスト:病院リハ 約1800元、自宅リハ 約1000元(2か月で800元=約1.5万円の節約)

ご覧の通り、「小さな椅子を使った在宅リハ」は病院通いと同等かそれ以上に効き目があり、しかも費用は安く済んでしまう、というわけです。

ここで面白いのが、「なぜ低い椅子が効くのか?」という点。膝を100〜120度くらいまで曲げられると、生活の大半は不自由なく過ごせるんですが、早期に深く曲げられないと、その後ずっと硬さが残ってしまうんですよね。研究チームは「低い椅子に座れば自然に膝が深く曲がるから、リハ効果を底上げできるのでは?」と仮説を立てたそうで、実際にそれがROM改善につながった、と。

もちろん限界もあります。サンプル数はやや小さいし、評価者が患者の群を知っていた可能性がある。さらに、自宅リハ組は研究チームから週1で電話やWeChat指導を受けていたので、現実にそこまで手厚いフォローを受けられるかは微妙です。

それでも、示唆は大きいですな。まとめると、

  • 在宅でも、ちょっとした工夫(低い椅子など)を取り入れれば病院リハと同等の成果が出せる
  • コストと通院負担を大きく減らせる
  • 感染症リスク(COVIDなど)を考えても、自宅リハの価値は高い

って感じでして、まさに「実用的で続けやすいリハの工夫」を裏付けるデータであります。

なので、もし術後リハに取り組むとしたら「ベッドの高さを少しずつ下げる」みたいな、生活の中に自然に組み込める工夫から始めるのも良さそうですね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました