理学療法士がよく言いがちなセリフが「体幹がしっかりしてないから……」ですね。
僕も結構言いがちではあるのですが、じゃあ体幹トレーニングを重点的に行ってもらうかと言うと、自主練指導はするのですがリハ中はやらながちだったりします。
というのも、体幹トレーニングの代表格である腹筋やプランクって、体幹ヨワヨワの患者さんには高負荷すぎたり、危なかったりするんですよ。何より地味な割にキツイし、フォームが間違ってるとあまり効かなかったりするので、「活動量が増えて徐々に強くなってくれるといいなー」と祈りがちなヘボPTは僕ですはい。
そんな中で参考になりそうな研究(R)があったので紹介したいと思います。
これは甲州リハビリテーション病院が行った研究で、健常者80名(職員及び学生で平均年齢25.0±3.5歳)を集めて、
- 上肢ペダリング運動を骨盤中間位で行った群
- ペダリング運動を骨盤後傾位で行った群
- コントロール群(上肢ペダリング運動を実施せずに3分間休憩)
に分類。
ペダリング運動は、タオルを緊張させた状態を保ちながら、タオルの中心を軸に上肢を真っ直ぐ且つ大きく回転するように、120回/分の速度で1分間実施し、運動実施前後に1分間の休憩を設けたそうな。
すると他の群に比べて、上肢ペダリング運動を骨盤中間位で行った群は10m最大歩行速度、最大一歩幅、腰部安定化機能評価共に運動後に有意に改善がみられたようです。
このことから研究チームは
腰部安定化機能評価においても有意差を認めたことから,上肢ペダリング運動がコアトレとして有効であると考える。
とのこと。
面白いのは、ペダリング運動を骨盤後傾位で行った群とコントロール群に差がなかったことですね。これについて研究チームは
上肢ペダリング運動は骨盤中間位で行わなければコアトレとして有効ではないと考える。
ということでした。まあ日常生活で考えても、背もたれにもたれっぱなしじゃ体幹なんて使わないですからね。
この論文を参考に、先日小脳疾患の患者さんに上肢ペダリング運動をやってもらいました。といってもタオルではなく、こういう機器で「車いすの背もたれから背中を離して漕いでください」と指示し、10分行ってもらいました。
上肢ペダリング運動の前後で歩行を評価したのですが、たしかに杖のコントロールが上手くなっていたり、自制外の動揺がなくなっていたり、コアの出力が上がっている印象を受けました。
何より患者自身が「お腹に効く」と言っていたので効くのでしょう。
職場によってはエスカルゴ等のミニバイクがあると思いますので、「体幹鍛えてほしいけど普通の運動は難しそうだな」という方にお試しいただければと思います。もちろん骨盤を起こして。
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