POEMS症候群とリハビリ──「まれな病気」に科学が言えることは?

POEMS症候群による手足のしびれや痛みを訴える男性の写真。膝を押さえ、手足に神経障害の症状が出ている様子。 日記

今回の題材はちょっと珍しい疾患です。名前は POEMS症候群。正式には Polyneuropathy, Organomegaly, Endocrinopathy, Monoclonal plasma cell disorder, Skin changes の頭文字をつなげたもの。つまり「多発神経障害・臓器の腫れ・内分泌の不調・形質細胞の異常・皮膚の変化」という特徴をまとめた病気なんですね。

POEMSはまれだけれど、治療は可能です。ただし一番やっかいなのが「多発神経障害」で、手足の感覚や動きを損なうせいで、生活の質や移動能力がガクンと落ちてしまう。近年の医学の進歩で生存率は良くなっているのに、身体の機能回復はまだまだ課題として残っているわけです。

じゃあリハビリはどうなの?

ここで気になるのが「リハビリでどこまで改善できるのか?」という点。そこで研究者たちが行ったのが、スコーピングレビュー。これは「世の中にある研究を幅広く拾って、いま何がわかっていて何がわかっていないか」を整理する手法です。今回はそんなスコーピングレビュー(R)を紹介します。

調べたデータベースは、MEDLINEやCINAHL、EMBASEなど主要どころをフルカバー。加えて灰色文献(論文になっていない報告)や引用リストからも追加を探し出しました。最終的に21本の論文が対象になっています。

どんな結果が出たか?

レビューでは、研究を大きく3つのテーマに分けてまとめています。

  1. 身体と機能の障害
    手足のしびれや筋力低下など、生活に直結する困難が多い。
  2. 身体の回復
    治療によってある程度は改善するが、障害が残るケースが目立つ。
  3. リハビリ介入
    ここが問題で、リハビリを実際に評価した研究はゼロ。介入の内容やタイミングを詳しく書いた報告もほとんどなし。

要するに、ほとんどの論文は「医療的な治療をしたら身体機能がどうなったか」だけを見ていて、「リハビリで機能や生活の質をどう高めるか」には触れていないんですな。

まとめると

研究チームはこう結論づけています。

  • 専門家によるリハビリの推奨や標準ガイドラインが必要
  • 効果的なリハビリ方法や「いつ・どのくらい・患者の希望にどう合わせるか」を調べる研究が欠けている
  • 生活の質や社会参加に目を向けた評価が今後の課題

つまり、「治療で命は助かるようになった。だけど、その後の生活をどう支えるかは、まだ研究の空白が大きい」というのが現状です。

POEMS症候群のようなまれな疾患でも、「生きる」だけでなく「生活を取り戻す」ことが重要。そのためには、標準化されたリハビリの仕組みづくりが必須だ、というのが今回のレビューのメッセージでした。

じゃあどうやってリハビリすればいいんだよ」と思うかもしれません。案としては、POEMSは「多発ニューロパチー=手足のしびれや筋力低下が中心の病気」という点を押さえ、糖尿病性末梢神経障害の運動療法を土台に組み立てるのが妥当かと思われます。

具体的には、

  • 足部・足関節トレーニング
  • バランス・協調トレーニング
  • レジスタンストレーニング
  • 有酸素運動

辺りが中心になってくるのかなと思います。

また、「こうすればいい」と思いこむのではなく、介入前後の評価を行い、「どのリハビリを行った時が調子が良さそうかな?」というのをみながら介入することが大事だと思います。まぁPOEMS症候群に限らず、どの症例でも言えることなのですが。

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