骨折治療にLIPUSは効くのか問題──「超音波で治癒が早まる」ってマジなの?

論文

LIPUS(Low-Intensity Pulsed Ultrasound)は低出力パルス超音波。骨折部に毎日20分くらい、ビビビッと当てることで、血流とか細胞の代謝を刺激して骨がくっつくのを早める…らしいです。

もともとは1990年代に海外で小規模試験が始まって、ある研究では治癒期間が最大40%も短縮された!なんて報告も出たため、日本でも2000年代から先進医療→保険適用へと進み、今では整形外科の定番ツールになってます。

でも最近は、その効果にちょっと疑問符がついてきてるのが現状。

「エビデンス的にはどうなの?」って話

結論から言うと、

「最近のガイドラインやメタ分析では、ちょっと微妙……」
って空気感になってきてます。

実際のところ、海外の大手機関ではこんな感じ↓

AAOS(アメリカ整形外科学会)

  • 2020年:遠位橈骨骨折のガイドラインからLIPUSの推奨を削除
  • 2022年:鎖骨骨折に「使うべきでない」と明言
  • 他の骨折に対する推奨も、ほぼナシ

要するに、
「特に急性骨折では、LIPUSを標準治療に組み込む根拠がないよね」ってことですな。

NICE(英国)

  • 2018年にバッサリと非推奨
    • 癒合遅延リスクが低い:使うべきじゃない
    • 高リスク:研究内ならOK
    • 偽関節:特別な監視下でならアリ

つまり、通常診療での使用は推奨せず。
「うーん、使いたいなら臨床試験でどうぞ?」みたいなスタンスです。

BMJ(国際パネル)

  • 2017年:急性骨折にルーチンで使うのはオススメしませんという「弱い推奨」

→ つまり、「まあ害はなさそうだけど、わざわざ全員に使うもんじゃないよね」って話です。

メタ分析でも結果はわりとまちまち

LIPUSについては、いろんな研究をまとめたメタ分析もたくさん出てまして──

  • 肯定派:
    • 2017年 Louら → 「X線上では癒合が早まってるっぽい」
    • 生活の質もほんのり改善(けど、劇的ではない)
  • 否定派:
    • 2016年 TRUST試験(RCT・約500人)→ 効果ナシ
    • 2017年 Schandelmaierら(BMJ)→ 「機能・痛みには影響なし」
    • 2023年 Cochraneレビュー → 「エビデンスに不確実性あり」

という感じで、研究の質が高くなるほど「効果ないかも」って傾向が強くなってるんですな。

じゃあ偽関節には効くの?

「じゃあせめて、骨がくっつきにくい“偽関節”には効くんじゃね?」って話なんですが、これも微妙。

  • 昔は「85%以上で癒合成功!」みたいな報告もあった
  • でも、それってほぼ症例集レベルの話
  • 最近のレビューでは、「比較試験が足りなさすぎて結論出せない」が主流

つまり、「効くかもしれないけど、確証はまだないよね……」という残念な感じ。

日本では保険適用されてるの?

されてます!

  • 観血的固定後の急性期骨折(3週間以内開始)→ 4620点
  • 遷延治癒・偽関節(3か月以降)→ 12500点

というわけで、保険的には「急性期&難治性骨折」の両方OK
ただし保存療法(ギプスだけ)だと算定できません。
なので、基本的には手術+LIPUSのセット運用になる感じです。

まとめ

  • 「超音波で骨が早く治る」は昔の研究ではポジティブ
  • でも最近の大規模試験では「効果ないかも…」という結果も多い
  • 偽関節にも「効くかもだけど、証拠が弱い」
  • 新鮮骨折へのRoutine使用は推奨されてない
  • 患者に説明する時は、過度な期待をさせないよう注意

なんかこう、「痛くもないし、リスクも少ない」ってことで、つい「やっとこっか」となりがちなLIPUSですが、「科学的にバッチリ効く!」ってわけではないのが現状みたいですな。

なので、「保険も使えるし、ダメ元でやってみよう」くらいのテンションで使うのが、ちょうどいいのかもしれません。

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