今回は「肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)」に対して、肩鎖関節のモビライゼーションを併用した理学療法が効果的かどうかを調べた研究(R)があったので、ちょっとご紹介しようかなと思います。
これは、イランのタブリーズ医科大学のDolatkhah博士らが行ったランダム化比較試験(RCT)で、「肩鎖関節のモビライゼーションを加えると、通常の理学療法単独よりも肩の痛みや動きを改善するのか?」ってことを検証してくれてます。
研究の概要
具体的にどんな研究?というと、
- 五十肩の患者さん56名を対象に、ランダムに2グループに分けて1ヶ月間治療。
- 「通常の理学療法のみ」のグループ(28名)と、「肩鎖関節モビライゼーション+理学療法」のグループ(28名)を比較。
- 主な評価ポイントは、肩の痛みと日常生活の困難さを示す「肩関節痛・機能障害指数(SPADI)」、痛みの程度を示す「視覚的アナログスケール(VAS)」、そして肩の可動域。
気になる結果は?
さて、結果はどうだったかというと、
- 肩鎖関節モビライゼーションを併用したグループの方が、通常の理学療法だけのグループよりも「痛みの軽減」や「日常生活での支障」が明らかに改善
- 特に治療直後と1ヶ月後の時点で、痛みや障害のスコアが統計的に有意に良かった
- また、肩の「外転(腕を横に挙げる動作)」の可動域も、モビライゼーションを加えたグループで顕著に改善がみられた。
- 一方で、それ以外の動きについては2グループ間で差はなかったようです。
肩鎖関節をちょっと動かしてあげるだけで、こんなに違うとは面白いですね~。
実際のやり方(肩鎖関節モビライゼーション)
こう聞くと、「肩鎖関節モビライゼーションってどうやればいいんや」となると思いますので、代表的なやり方を書いておきます。
尾側(下方)方向の滑り(下方グライド)
- 患者さんは側臥位、術者は鎖骨の遠位端に母指を乗せる。
- 母指に圧をかけ、鎖骨を下方へ小さく押し込むように操作しながら、肩関節を外転させる。
まとめ
- 肩鎖関節のモビライゼーションを加えると痛みが大幅に改善!
- 特に肩の外転動作がよくなる。
- ただし他の動きではそこまで違いは見られなかった。
という研究でした。
個人的に、恥ずかしながら今まで肩鎖関節は意識できていなかったので、これからの肩の治療に活かしていきたいです。それではさようなら。
リンク
コメント