「小脳失調症にリハビリって効くの?」──そんな疑問に対して、なかなか信頼できそうな答えを出してくれた最新のメタ分析(R)が2024年に登場しました。
小脳失調症(DCA)というのは、バランス感覚や協調運動が徐々に崩れていく進行性の神経疾患でして、これまで決定的な治療法はないとされてました。
今回の研究は、過去のRCT(ランダム化比較試験)18本をまとめて、理学療法の効果を評価してくれたものです。
というわけで、今回はその中身をざっくり解説していきましょう。
効果は「ありそうだけど、かなり控えめ」
まずメインの結論からいうと、
理学療法を受けた人たちは、症状の重さを示すSARAスコアが平均で−1.41ポイント改善!
という結果になってまして、いちおう「ちゃんと効果あり」ということになります。
ただし、ここで注意したいのは、
- SARAの「最小検出可能変化」は3.5ポイント(=それ未満だと誤差の可能性も)
- 効果のバラツキが大きすぎ(I²=80%超え)
- 研究の約4割が「高リスク」と判定されている
- 使われた運動の内容がバラバラ(筋トレだけの人もいれば、有酸素や日常動作まで含む人も)
……といった事情があって、エビデンスの確実性としては「かなり低め」とされています(GRADE評価では“very low”)。
要するに、「効果が出た人もいるけど、全員に効くとは限らないし、研究の質もちょっとアヤしいかもね」という感じ。
「やらないよりはマシ」くらいの温度感で受け止めておくのがよさそうです。
どんな運動が“マシ”だったのか?
じゃあ、「どんな運動療法ならマシなのか?」って話ですが、ここも分析がされていて、ざっくり以下のような結果になってます。
- 有酸素運動(バイクとか):−1.65ポイント
- バランストレーニング:−1.58ポイント
- 多面的アプローチ(筋トレ+バランス+ADL):−1.59ポイント
- 振動刺激:効果なし
- デュアルタスク(認知+運動):ほぼ無効
この中でも、有酸素運動のスコアが最も良くて、「神経可塑性が刺激されるからじゃないか」なんて推測もあったりします。自転車こぎの研究(Changら, 2015)では、実際に歩行能力の改善が見られたケースもあるそうな。
ただ、どの運動も効果の幅は小さくて、「毎日2時間以上、週5回やってこの程度か…」みたいなケースも報告されてます。
継続のハードルはけっこう高めで、効果を得るには「根気と習慣化」が必要っぽいですね。
まとめ
小脳失調症に対する理学療法は、「多少効く」けど「過度な期待は禁物」
続けやすい有酸素系から始めて、無理のない範囲で生活に組み込むのが吉
といったところでしょうか。どうぞよしなに。
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