成人ADHDで、セルフガイド型のデジタルCBTはどこまで役立つのか

論文

成人ADHDの人を対象に、通常ケアにセルフガイド型のデジタル介入 attexis を上乗せした研究では、通常ケアのみと比べて、3か月後のADHD症状がより低く、仕事や社会生活の支障、抑うつ症状、自己評価、生活の質にもよい差が報告されました。

研究の方法

これはランダム化比較試験(RCT)で、参加者をランダムにグループへ分けて、結果を比べる研究です。

対象は、18〜65歳で、面接により成人ADHDと確認された337人でした。参加者は、attexis を通常ケアに追加する群と、通常ケアのみの群に割り付けられました。通常ケアには、薬物療法、精神療法、あるいは特別な治療なしも含まれており、実際の診療に近い条件で比べた研究でした。

attexis は、成人ADHD向けに作られたセルフガイド型のオンラインプログラムです。認知行動療法を土台にしつつ、マインドフルネスの要素も取り入れ、心理教育、日常の工夫、課題、リマインダー、進み具合の確認などを組み合わせています。専門家が毎回ついて進める形ではなく、本人が自分で使う前提の設計です。ドイツでは、こうしたデジタル治療アプリを公的な制度で評価し、医師や心理療法士が処方できる仕組みがあり、attexis もその枠組みで位置づけられています。

要するに、日本でいう保険適応の治療として行える感じですね。

主な評価項目は、3か月後のADHD症状でした。あわせて副次評価項目として、仕事や社会生活の支障、抑うつ症状、自己評価、生活の質も調べ、6か月後まで追跡しています。

主な結果

主要評価項目だった3か月後のADHD症状は、attexis を通常ケアに追加した群で通常ケアのみの群よりも症状が優位に低く、群間差は比較的大きいものでした。

副次評価項目も、3か月後の仕事・社会生活の支障、抑うつ症状、自己評価、生活の質のすべてで、attexis 群のほうが有意によい結果が報告されました。こうした差は6か月後にもおおむね続いていました。

脱落者の扱いを厳しめにして再計算しても、主要評価項目の結果は大きく崩れませんでした。さらに、ADHD症状が30%以上改善した人の割合も attexis 群のほうが多くなっていました。一方で、その基準を満たした人が介入群の大半を占めたわけではなく、全員に大きな変化が出たわけではありません。

安全性については、介入に関連すると判断された有害事象は報告されていませんでした。

まとめ

この研究では、成人ADHDの人で、通常ケアにセルフガイド型のデジタル介入 attexis を追加すると、通常ケアのみと比べて、ADHD症状だけでなく、生活機能や抑うつ症状などにもよい差が報告されました。対面の心理支援を毎回受けなくても、自分で進められるデジタルプログラムが上乗せの選択肢になりうることを示した研究といえます。

また、attexis は単なる一般向けのセルフケアアプリというより、ドイツでは成人ADHD向けのデジタル治療として制度の中に組み込まれている点も特徴です。このため、日本の読者には、気分記録アプリやセルフケアアプリよりも、保険診療に近い位置づけの治療用アプリとしてイメージしたほうが近いかもしれません。

ただ、今回も限界はあります。

  • 参加者は自分が介入群か対照群かを知っていた
  • 評価項目は自己記入式が中心
  • 通常ケアとの比較なので、介入そのもの以外の期待効果が入りうる
  • 脱落は少ないとはいえ、介入群のほうがやや多い

なので結論としては、“ちゃんとした比較試験として組まれているが、心理介入研究で避けにくい弱点は残る”ということです。

読者の皆様におかれましては、この研究を日本でそのまま真似するのはまだ難しいのですが、アプリでもなんでもいいので、予定を細かく分ける 先延ばししにくい形にする リマインダーを使うみたいな自分に合うCBT的な工夫を取り入れてみるというところが落としどころかなと思います。どうぞよしなに。

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