「認知行動療法(Cognitive-behavioural therapy:CBT)が効く」ってのはよく聞く話。うつに効く、不安に効く、慢性痛にも効く——いろんな論文でそう書かれている一方で、「じゃあ結局、全体としてどれくらい効くの?」は別問題だったりします。
そこで、2021年に出た“レビューのレビュー”(システマティックレビューを集めて評価する研究)では、「CBTには病気の種類をまたいだ“共通の効果”があるのか?」を、かなり大きいスケールで検討しています(R)。
この研究は、1992年〜2019年1月までに公表された494件のシステマティックレビューをマッピング(網羅して整理)し、そのうち条件を満たしたレビューを使って、健康関連QOL(生活の質)、うつ、不安、痛みへの効果をまとめています。
※主要な統合解析(パノラマ・メタ解析)に入ったのは 71件です。
CBTの効果が確認されたアウトカム(疾患横断の一般効果)
| アウトカム | 効果量(SMD) | 備考 |
|---|---|---|
| 健康関連QOL(生活の質) | 0.23 | 異質性が低め(I²=32%) |
| 不安 | 0.30 | 中程度の異質性(I²=62%) |
| 痛み | 0.23 | 中程度の異質性(I²=64%) |
※SMD=指標が違う研究をまとめるための「標準化した差」。数値は概ね「小さめ」の部類です。
効果がまとめられなかったアウトカム
| アウトカム | 理由 |
|---|---|
| うつ | 研究間・疾患間のばらつきが大きく(高い異質性)、疾患をまたいだ1つの数字に統合できなかった |
ここは誤解しやすい点で、「CBTがうつに効かない」という意味ではなく、「疾患横断で同じ効き方をするとは言いにくかった」という整理です。
ということで、結論を雑に言うなら、CBTは健康関連QOL・不安・痛みに対して“疾患をまたいだ小さめの一貫した効果”が報告されている、が一番近いです。
なんでCBTは幅広い領域で効きうるの?
この研究が示唆しているのは、CBTが「特定の病気を直接どうこうする」というより、考え方・行動・対処のパターンに介入して、結果としてQOLや不安、痛みのつらさに波及するタイプの可能性です(あくまで推測)。
例としては、こんな方向性。
- 認知の修正:思考の癖を見直すことで不安や気分に影響
- 行動面の調整:回避や休みすぎを減らして生活の回り方を改善
- 痛みへの対処:痛みの受け止め方・対処スキルを増やして主観的負担を下げる
ただし、注意点もある
レビューでは、以下の限界も指摘されておりました。
エビデンスの質の問題
494件のレビューのうち、**低い質と評価されたものが多数(71%)**で、土台が強固とは言いにくい部分があります。
対象集団の偏り
研究は主にヨーロッパ・北米・オーストララシアに偏り、高齢者、予防目的、少数民族、アジア・アフリカ・南米などはエビデンスが限られます。
「予防」への効果は不明
予防としてのCBTは、全体として情報が薄い(研究が少ない)という扱いです。
この研究では、比較相手(対照群)の置き方で効果の見え方が変わりうる点も触れられています。特に健康関連QOLでは、能動的対照かどうかで差が出ています。
- 待機など「非能動的」な比較:効果が大きく見えやすい
- 別の治療など「能動的」な比較:効果が小さくなりやすい
要するに、CBTの一部は「何らかのケアを受ける」こと自体の効果(非特異的効果)も混じりうる、という読み方になります。
まとめ:CBTをどう活用するか
- 過度な期待は禁物:効果量は小さめ
- ただし使いどころは広い:健康関連QOL、不安、痛みでは疾患横断の一貫した効果が報告
- うつは一括で語りにくい:効かないではなく、効き方のばらつきが大きい
- 個人差前提:合わなければ別の選択肢も検討
もちろんCBTだけで全部解決、ではないので、運動・睡眠・必要に応じた薬物療法などと“組み合わせの一手”として考えるのが現実的です。


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