「深層頸屈筋(longus colli/longus capitis)のモーターコントロール訓練に圧力バイオフィードバックを使うと、痛みや障害は改善するのか?」という2020年に出たシステマティックレビュー&メタ分析(R)があったので、内容をまとめておこうと思います。
まずは研究の基本デザインから。
- 対象:頸部痛のある患者(17研究、うち10本を定量解析に使用)
- 介入:圧力バイオフィードバック(スタビライザー)を用いた深層頸屈筋のモーターコントロール訓練
- 比較:筋持久力トレーニングや通常リハなど
- 評価項目:頸部痛の強さ、障害スコア
で、結果を見てみると、
- 痛み:Hedges’ g = 0.32(95% CI 0.04–0.60)
- 障害:Hedges’ g = 0.40(95% CI 0.12–0.68)
って感じで、どちらも小〜中程度の効果量で、「深層頸屈筋のモーターコントロール訓練は筋持久力トレーニングよりは優れているけど、通常リハと比べると断言はできない」ぐらいの感じですね。
もう少し中身を見ていくと、深層頸屈筋ってのは「能動的な靱帯」みたいな役割をしていて、頸椎を安定化させる大事な筋群なんですが、頸部痛の人ではここが働きにくくなるのが定番のパターン。その結果、胸鎖乳突筋や斜角筋みたいな表層筋が過活動になってしまう。これが痛みや姿勢不良につながる、という筋道です。
そこで圧力バイオフィードバックを使うと、「小さなうなずき」で狙った深層層がちゃんと動いているかを数値で確認できる。20mmHgから始めて、2mmHgずつステップアップする方法が基本であります。
臨床的な進め方も研究である程度整理されていて、
- 仰臥位でカフを20mmHgに設定
- 22〜30mmHgまで段階的に「小さなうなずき」
- 各段階で10秒保持×5回、週3〜5回、4〜6週
ぐらいで効果が出やすいみたい。
ちなみに「mmHgなんて測れない!」って場合は、手のひらを患者の頭の下に入れたり、タオルで代用するといいと思います。最初は低い高さで短い時間から始めて、慣れてきたら高さや時間を増やせばOK。
要は「表層が暴れず、呼吸を止めずに、小さな動きで深層を使う」ことさえ守ればいいわけです。
まとめると、この研究の示唆はざっくり以下の通り。
- 圧力バイオフィードバックを使った深層頸屈筋のモーターコントロール訓練は、頸部痛と障害を小〜中程度改善する
- 筋持久力トレーニングよりは優位に効果がある
「首の痛みでリハをやるなら、とりあえずスタビライザーでCCF(cranio-cervical flexion)をやってみる」と押さえておくと、臨床でも使いやすいんじゃないかと思いますな。
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