今回は「METがハムストリング(太ももの裏の筋肉)の柔軟性やスポーツパフォーマンスにどれくらい効果的か?」ってことを徹底検証した論文(R)をご紹介します。筆者はパキスタンやマレーシアの大学など、国際色豊かな研究メンバーになってます。
で、ざっくり言うと、MET(Muscle Energy Technique)は患者さん自身の筋力発揮を活用して、筋肉をリラックスさせたり伸ばしたりする手技療法のこと。いわゆるホールド&リラックスですね。個人的にはPNFストレッチも同義だと解釈しています。
研究の概要
- 対象
今回のシステマティックレビューでは、筋エネルギー・テクニック(MET)を使ったトレーニングがどのくらいハムストリングの柔軟性を高め、さらにスポーツパフォーマンスをアップさせるかを調べたランダム化比較試験(RCT)を19件(参加者949名分)集めて分析してます。 - 比較対象
METの代表的な手法として、いわゆる「ポスト・ファシリテーション・ストレッチ(PFS)」とか「ポスト・アイソメトリック・リラクゼーション(PIR)」が使われていて、いずれも「筋肉をちょいと力ませてから、ストレッチをかける」アプローチ。一方、比較対象としては「ハムストリング・ノルディック・ロワー(HNL)トレーニング」とか、従来の静的ストレッチなども用いられています。 - 評価項目
ハムストリングの柔軟性(要はどれだけ前屈しやすくなるか)や、俊敏性・機敏性(アジリティ)の向上度合いなどが主な評価指標になってます。「どれだけ筋肉が伸びるか」「走ったり切り返したりするときの動きがどう変わるか」ってことですね。
研究結果
メタ解析の結果を見ると、METは静的ストレッチやコントロール群に比べて、ハムストリングの柔軟性を明確に改善したってデータが出てます。しかも、METの中でも特に PFS(ポスト・ファシリテーション・ストレッチ)が一番効果が大きかった とのこと。
その次が PIR(ポスト・アイソメトリック・リラクゼーション) で、さらに「アジリティ(俊敏性)を高める」って観点でも優位性があったようです。
一方で、比較された HNL(ハムストリング・ノルディック・ロワー)トレーニングは、ハムストリングの柔軟性アップという点ではPFSやPIRほどの効果は示されなかったみたいですね。
もちろん「筋力をつけたい」という人にとってはHNLも有効な手段だろうし、一概に「悪い」というわけじゃないですが、「柔らかくしてパフォーマンスを上げたい」ならMETのほうがいいよって話っぽいです。
注目ポイント
- METはハムストリングを伸ばすのにかなり有効
普通のストレッチよりもしっかり伸びる可能性あり。 - PFSとPIRが特に優秀
前屈やスプリント、アジリティ動作なんかが良くなるって報告が多い。 - HNLトレーニングよりも柔軟性向上に強み
筋力強化にはHNLもアリだけど、柔軟性狙いならMETのほうが高評価。 - スポーツ現場のリハビリやコンディショニングに使えそう
ただし、まだ標準化されたプロトコルは少ないので、今後の研究に期待。
まとめ
- MET(特にPFSとPIR)はハムストリングの柔軟性とアジリティ向上に効果的。
- HNLも筋力アップには使えるが、柔軟性向上目的ならMETが優勢。
- 現時点でもかなり期待できる手法だけど、さらなる研究で標準的な手順や効果検証が進むといいかも。
まぁ一方では「慢性の疼痛および身体障害の短期的なアウトカムに関して、METをその他の治療に加えた場合に追加の利益は得られなかった」なんて研究もありまして、なかなか判断に悩むところではあります。まぁこの手技だけで効果が出るなら理学療法士なんていらないか。
個人的には、やっぱりこれからもこの手技を使おうかなと思いました。まぁ僕はPIRと言われるより、PNFストレッチとかホールド&リラックスと言われた方が馴染みがあります。
あと、HNLトレーニングは初めて知ったのですが、ACL損傷の人のリハビリに使えそうだなと感じました(クッションで脛骨の前方移動が制限できそうなので)。柔軟性向上目的ではPIRを使っていって、筋力トレーニングのバリエーションとしてHNLも使おうかなと思います。どうぞよしなに。
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